40代から編み直す

「また一からやり直しか」

転職を考えるとき、異業種への転換を迫られるとき、多くの人がそう感じます。これまで積み上げてきたものが、崩れていくような感覚。40代ともなれば、その喪失感はなおさら大きい。

でも、本当にそうでしょうか。積み上げてきたものは、本当に崩れてしまうのでしょうか。

私はそう思いません。

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すべてがつながっていた

私自身、キャリアの転換を何度も経験してきました。秘書、営業、行政関連団体、大学、損保、そして起業。傍から見れば、脈絡のない歩みに映るかもしれません。

でも今、振り返ってみると、すべてがつながっています。業種も規模も文化もまったく異なる組織の中で、私はそれぞれの場所でリーダーの在り方を間近で見てきました。どう意思決定するか、どう人を動かすか、どう組織を束ねるか。経営というものを、現場のすぐ隣で肌で感じ続けてきた。

異なる業界で培った視野、人との関わり方、組織の中で学んだこと。それらは捨てたのではなく、形を変えて今の仕事の土台になっています。

キャリアとは、積み上げるものではなく、編み直すものだと、私は今そう考えています。

ほどいても、糸は残っている

「編み直す」とはどういうことか。

毛糸を想像してください。一度編んだセーターをほどいても、毛糸そのものはなくならない。むしろ、ほどいた糸を手に取り直したとき、次は何を編もうかと考える自由が生まれます。

キャリアも同じです。転職や異業種への転換は、これまでの経験を「ほどく」作業です。でも糸は残っている。その糸を使って、新しいものを編み始めることができる。

ここで大切なのは、「ほどく」ことへの恐れを手放すことです。長く同じ仕事をしてきた人ほど、その恐れは深い。「この仕事しかできない」「今さら新しいことを覚えられない」「年齢的にもう遅い」。そんな声が、頭の中でざわざわと鳴り始める。

でもその声は、あなたの本音ではなく、これまでの環境があなたに植えつけた思い込みであることがほとんどです。糸はほどけても、あなたの手の中に残っている。その重さと温かさを、まず感じてほしいのです。

これまでの経験は、無駄じゃない。形が変わるだけで、消えることはないのです。

異業種の経験が、強みになるとき

40代のキャリアの転換が難しく感じられる理由の一つは、「専門性を捨てなければならない」という思い込みです。

でも実際には、異業種で積んだ経験こそが、強みになることが多い。営業出身だからこそ、人の話を聞く力がある。管理職を経験したからこそ、全体を俯瞰する視点がある。育児や介護を経験したからこそ、多様な価値観に寄り添える。

「それは仕事と関係ない」と思っていた経験が、編み直したとき初めて、唯一無二の糸になる。

転機は、問いの始まり

転機を経て初めて見えてくるものがあります。それは「自分軸」です。

順調なときは、周りの流れに乗っていられます。でも転機という揺らぎの中で、人は初めて「自分は本当は何を大切にしているのか」「どんな働き方が自分らしいのか」を問い直すことができる。

転機の入り口は、いつも苦しいものです。「なぜ自分だけ」「もっと早く気づいていれば」「もう取り返しがつかないかもしれない」。そうした感情が押し寄せてくる。それは当然のことです。長く積み上げてきたものが揺らぐとき、人は誰でも怖い。

でも、その苦しさの中にこそ、問いが生まれます。苦しいから、立ち止まる。立ち止まるから、考える。考えるから、本当に大切なものが見えてくる。転機は、終わりではありません。自分を知るための、問いの始まりです。

キャリアコンサルタントとして、私が日々クライアントと向き合う中で大切にしていることがあります。自分の人生を棚卸しし、そこから自分だけの強みを見つけていくこと。そしてそれを、次の場でさらに生かしていく。面接練習も、履歴書の指導も、突き詰めれば同じことを伝えています。「あなたにしかできないことを、最大限に表現する術」を一緒に見つけていく、それだけのことです。

あなたの糸は、まだ温かい

あなたのこれまでの経験を、一度手に取り直してみてください。

新卒から積み上げてきたキャリア、途中で変えた道、思い通りにならなかった時期。どれも、あなたという人間を織りなす糸です。

40代は、その糸の意味が、ようやく見えてくる年齢だと私は思っています。焦らなくていい。捨てなくていい。ただ、編み直す勇気を持てばいい。

あなたの糸は、まだ温かい。

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