わたしが起業して失ったもの

毎月決まった日に振り込まれるお給料がなくなりました。「これが正解」という安心感がなくなり、困ったときにすぐ相談できる環境もなくなりました。仕事とプライベートの境界線もあいまいになりました。

会社員だった頃、それらは「あって当たり前」のものでした。失ってみて初めて、そこに寄りかかっていた自分に気づき、安定の良さを身に沁みて感じたりもしました。

でも不思議と、喪失感よりも強く、別の感覚がやってきました。

同時に感じていたのは、自由でした。

目次

失ったものがくれた、選び直すきっかけ

誰かに指示される仕事ではなく、自分で選んだ仕事をする。自分のペースで、自分の価値観で動いていける。その充実感と共に、「すべて自分で選んでいかなければならない」という責任が、静かにのしかかってきました。

そして、ずっと欲しかったものがありました。

クライアントと本音で向き合える時間。子どもの「今」を大切にしたい気持ち。失敗しても「自分で決めた」と思える納得感。人と比べるより自分の軸を見る習慣。そして、私を信じる時間。

失ったものがくれたのは、心から欲しかったものを選び直すための、きっかけだったのです。

足元をすくわれた瞬間

でも、本当に足元をすくわれたのは、会社を辞めて2か月後のことでした。

「これで行く」と決めた矢先に、それまで一緒に歩んできたクライアントさんたちとの契約が、次々と終わっていったのです。クライアントゼロ。あれだけ順調だったはずのスタートが、突然、静寂に変わった瞬間でした。

自由を選んだはずなのに、足の下に何もない感覚。誰も守ってくれない、正解も教えてくれない、その現実を、初めて肌で感じた時期でした。

起業しても、不安はなくならない

正直に言います。

起業したからといって、不安や葛藤がなくなったわけではありません。

売上が安定しない月がある。思うように動けない時期がある。自分の選択が正しかったのか分からなくなる夜がある。会社員を辞めたことで手に入れた自由の裏側に、誰も守ってくれないという現実が、静かに存在しています。

会社員のクライアントさんと話すと、今度は彼女たちの葛藤が見えてきます。やりたいことができない、評価されている実感がない、このままでいいのか分からない、でも辞める勇気もない。

起業していても、会社員でいても、不安や葛藤はなくなりません。場所が変わっても、形を変えて、また現れてくる。

どちらかではなく、両方を選ぶ

だからこそ私は、「どちらか」ではなく「両方をバランスよく」という選択をしました。

今の私は、週の半分を就労に、週の半分をコーチとしてクライアントと向き合う時間に充てています。雇用保険に入れる20時間の労働を確保しながら、キャリアコンサルタントとして籍を置き、資格を生かしたキャリアも重ねていく。それは自分自身への保険の意味も込めた、今の私らしい選択です。

起業していると、集客が永遠に続くのかという不安がついて回ります。講座の募集をしても人が集まらないこともある。突然「来月までで終了」となることも多々ある。どんなに実力があっても、どんなに一生懸命でも、個人で動く以上、そういったリスクは常に隣り合わせです。

起業か、会社員か。その二択で考える必要はないのかもしれません。自分の軸を持ちながら、状況に合わせて柔軟に選んでいく。何を選ぶかより、なぜそれを選ぶかの方が、ずっと大切だと思っています。

わたしはどうしたい?

だとしたら、不安や葛藤をなくそうとすることに、エネルギーを使わなくていいのかもしれません。

私が大切にしていることがあります。それは、正解を探すのではなく、「わたしはどうしたい?」と、自分に問いかけることです。

不安になったとき、迷ったとき、誰かと比べて焦ったとき。外側に正解を求めようとする前に、一度立ち止まって自分に聞く。「私は今、何を感じている?」「私は本当は、どうしたい?」

その問いが、自分の軸を取り戻す入り口になります。

仕事や居場所に違和感を感じているとき、多くの人は「環境を変えれば解決する」と思います。転職すれば、起業すれば、部署が変われば、うまくいくはずだと。

でも環境が変わっても、自分の軸がなければ、同じ葛藤がまた別の形で現れてきます。大切なのは、どこにいるかではなく、どんな軸を持って、そこに立っているか。

会社員でいることも、起業することも、どちらが正解というわけではない。あなたにとって「私らしい選択」は何か。その問いと向き合うことが、どんな場所にいても、自分を見失わないための土台になっていきます。

「わたしはどうしたい?」という問いは、シンプルなようで、深い。

長い間、誰かの期待に応えることや、正解を探すことに慣れてきた人ほど、この問いに答えるのが難しく感じることがあります。「自分がどうしたいか、よく分からない」という声を、コーチングの場でもよく聞きます。

それは、自分の気持ちが見えなくなっているのではなく、見ることを後回しにし続けてきたからかもしれません。

自分軸コーチングでは、「わたしはどうしたい?」という問いを一緒に掘り下げていきます。正解を教えるのではなく、あなたの中にある答えを引き出すこと。対話を重ねる中で、本当に向かいたい方向が、少しずつ輪郭を持ち始めていく。

仕事や居場所に違和感を感じているなら、その違和感はあなたの軸が動き始めているサインかもしれません。「わたしはどうしたい?」その問いと、一緒に向き合いましょう。

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